おまえの俺をおしえてくれ

9月16日出版 徳谷柿次郎の書籍『おまえの俺をおしえてくれ』寄稿エッセイブログ

「俺も昔は全然ダメやった」(記:乾隼人)

「やってこ!」「Do or Do」「スピード & パワー」etc……そんな語彙を使う柿次郎さんのことを、ずっと「強い人だ」と思っていた。

 

はじめてあった時、僕は柿次郎さんのフォロワーだった。全国を渡り歩くジモコロ編集長としての姿や、記事で知った過去の生い立ちと上京物語、そのどれもが自分にない"強さ"を印象付けていたし、本人はというと、会う前に膨らんだ「強い柿次郎」像がボヤけるほどに、冗談をまじえたやわらかい物腰で話す。それすらも僕には強さに見えた。

 

僕は初めて会ったその日から「ああ、おれはこの人が好きだな」と思った。そして、「この人に『おもんない、弱いヤツ』と思われたくないな」とも思っていた。

 

「一緒に仕事がしたいです!」と押しかけるようにして、柿次郎さんと関わりはじめて2年以上が経つ。そのあいだ、何度となく一緒に旅をして、何度となくその強さに甘えることになった。

 

取材ツアーで下手をこいては「ちゃんとせえ!」と叱られ、私生活で不義理をしては「ダサいぞ!」と一蹴された。僕は焦った。

 

「やばいぞ。『おれ、いい編集者になるんで』と押しかけてきた癖に、ただ迷惑をかけながら育てられている……」。たまに言われる「あの仕事、良かったやん!」とか「腕はあるんやから」が当時の糧だった。

 

一緒に沖縄の水族館でジンベエザメをみた時、ジンベエのお腹にまとわりつくようにして泳ぐコバンザメを見上げて、柿さんは「あれがいぬいかあ〜」と僕に聞こえるようにつぶやいた。

 

僕はそれをちょっぴり鋭利な冗談として流すこともできず、「マジか!?アレなん!?どないしよ!?」と心の中でドタバタともがいていた。

 

そんな一人相撲が続いて1年が経った頃、柿次郎さんから電話がかかってきた。「Huuuuで本をつくるから、いぬいが全部書いたらいいよ」。その誘いに心底驚いた。おれでいいんですか?と思った。「栃木にある、黒磯って街の本をつくりたくて。Huuuuはいろんな街を点で取材してきたけど、面で取材した本をつくろう。1年通って、作品をつくろう」。

 

それから1年以上の時間をかけて、黒磯の本を作った。精神的な一人相撲をしがちな僕に、柿さんは「チームをつくれ」と言い、集まったチームでドタバタともがきながら、Huuuuで初となる自主制作の書籍が完成した。制作の過程を大きく変えるほどのトラブルが起きたときは、柿次郎さんも一緒に何度も現地に通い、「何とかなる」といいながら一緒に動いてくれた。

 

かなり早い段階から、柿次郎さんには僕の「弱さ」が全部バレている。一人相撲しがちなことも、仕事のボール回しが苦手なことも、ノってこないと筆が進まないことも、全部。

 

ただ、それでも柿次郎さんは「タメが大事やから」「根っこを伸ばせ」と、待ってくれている。柿次郎さんにバレている僕の弱さの数だけ、僕は柿次郎さんの優しさに触れてきた。あの人の周りで僕が最も弱いからこそ、触れられた言葉や顔がある気もする。

 

柿次郎さんは、受け止める人で、拾う人で、待つ人だ。そして、誰よりも「気にしい」だ。Twitterでよく投稿しているあの「現場宝石タラバガニ」ですら、チームのメンバーを叱る最中に「あまりにも激怒してしまったので、冗談を混ぜようと思って」言った一言から生まれたと聞いて、笑ってしまった。

 

そして今年、「雇いたいって言ったのはだんごさんやから」と言いながら、僕をHuuuuの社員にしてくれた。(だんごさんはHuuuuの編集部長で、犬とビールが好きな編集者です)

 

旅先で車を走らせている時間や、飲み会の夜や、柿次郎さんといた時間を振り返ると、何度も「俺も昔は全然ダメやった」という話をしてくれている。そういう過去から地続きの場所に、いまの柿次郎さんもいると思うと、強くて速い柿次郎さんの動きが、土埃を上げながらドタドタと走る愛くるしい姿に見えてくる。

 

なんなら、旅先で出会った人から柿次郎さんの「ダメやった」話を聞いたこともある。なんでもお酒の席で、柿次郎さんがお世話になっている先輩の、さらに上の先輩にちょっかいをかけすぎて、「俺の先輩なめんなよ!!」と怒られてしまったらしい。その時は「この歳にもなって怒られてしまった…」と、ちょっと落ち込んでいたそうだ。

 

意外と、柿次郎さんにも弱いところはあるみたいだ。

 

 

プロフィール

乾 隼人(いぬい はやと)

1993年生まれ。株式会社Huuuu所属の編集者・ライター。関西の出版社で酒場をかけずり回る日々を経て、上京。栃木県、黒磯を取材した風旅出版第一弾書籍『A GUIDE to KUROISO 栃木県、黒磯。あたりまえに未来が生まれる町』主筆。2022年1月からHuuuuの社員になりました。

 

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アイデンティティを他者との対話で探る。今回の本のポイントです。テーマ「おまえの中の柿次郎を教えてくれ」でエッセイを寄稿してみませんか?

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※詳細・応募フォームはこちら

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9/16 出版記念イベント開催@東日本橋CITAN

東京@東日本橋のホステル「CITAN」で出版記念トーク&販売会やります。トーク相手に柳下さん、石崎くん。DJはスリーパーさん。

40歳誕生日にかこつけて、お祝いに本を買ってもらう商魂たくましい催しです。

 

※イベント詳細・参加はこちら

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書籍概要

■著者プロフィール■
徳谷柿次郎
1982年大阪生まれ。長野県在住。新聞配達と松屋のシフトリーダーを経て、26歳のときに背水の陣で上京し、コンテンツメーカー「有限会社ノオト」へ潜り込む。2011年に「株式会社バーグハンバーグバーグ」入社。バックオフィス、広報、WEBディレクター、ライター編集職を経て2017年に満を持して独立し、「株式会社Huuuu」を設立。全国47都道府県のローカル領域を軸に活動している。どこでも地元メディア『ジモコロ』編集長7年目。長野県の移住総合メディア『SuuHaa』を立ち上げたり、善光寺近くでお土産屋『シンカイ』を運営したり、自然と都会の価値を反復横とびしている。


■商品情報■
・今、自分は「ある」よりも「ない」だと思っている人
・自分の生き方に選択肢が「ない」と思ってる人
・いつか「ある」状態になりたいと思ってる人

この本はそんな人にこそ読んでもらいたい。


タイトル :おまえの俺をおしえてくれ
著者        :徳谷柿次郎
出版社    :風旅出版
発行元    :Huuuu
定価        :定価 大人1,800円(税別)
判型        :変形四六判(113 mm ×182mm)
発売日    :2022年9月16日(40歳)

 

目次(抜粋)

1)自分で自分を編集する
2)異常でしたね。執着が。
3)セロトニンがでない部屋
4)おまえすごいな、最高やな!
5)「遊ばなきゃ」っていう意識
6)ずっと下唇震えてましたからね、急に決断迫られて
7)自分にとって一番いい栄養分があるところに容赦なく動ける
8)おまえの俺をおしえてくれ

寄稿「おまえの俺をおしえてくれ」
小林直博/原宿/宮脇淳/シモダテツヤ/小野田弥恵/MOTOKO/塩谷舞/カツセマサヒコ/納谷ロマン/小倉ヒラク/藤本智士/友光だんご/石崎嵩人(敬称略)

 

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※この商品は「予約販売」となります。
ご予約(ご購入)いただいた方には、9/16より順次発送させていただきます。


■おしらせ■
学割 対面販売キャンペーンをやります!

 

長野市『シンカイ』実店舗
・9月16日 出版イベント@CITAN(東日本橋
・9月18日 出版イベント@シンカイ(長野市

 

「本読みたいけど、お金がないよ!」とお嘆きの学生向けに対面販売限定の格安販売キャンペーンを行います。上記の店舗、全国出版ツアーのイベント会場に来てもらって「学生証」を提示してもらったら、野口英世×1=「1000円(税込)」で販売。いつか出会える「おまえ」のために「おれ」が足を運んで、ギリギリ価格で攻めます。定価で買ってから値下げのキャッシュバックはできないのでご注意ください(そりゃそうだろ!)。

 

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