おまえの俺をおしえてくれ

9月16日出版 徳谷柿次郎の書籍『おまえの俺をおしえてくれ』寄稿エッセイブログ

「人類にとって徳谷柿次郎とは何者か?」(記:大島一貴)

大学で文学をかじってみて、ひとつ分かったことがある。

 

「言葉はしょせん言葉でしかない」ということだ。

 

いやいや逆でしょう?と思われるだろうか。確かにふつう、文学や批評や諸々のカルチャーに関係している人は「言葉は大事だ」と言うことが多い。

 

ただそれはひとえに、彼らが言葉のプロだからだ。言葉のプロだからかっこいい言い回しを使えるし、レトリックの技巧によって、ロジックを超えた感動を人に与えることもできる。

 

当然それは素晴らしいことだと思う。言葉は時に人を救う。少しのあいだ、様々なしがらみの外へ、資本主義の外へ、僕らを連れて行ってくれる。

 

けれど僕には、ふと虚しくなる瞬間もあった。

 

「カウンターっぽいこと」や「資本主義っぽくないこと」を、ドレスアップされた語彙を用いて発信する"だけ"ならば簡単だ。そんなのは僕でもできる。世に言う「常識的なこと」をまず想定し、それとは逆の内容を言えるようなレトリックを組み立てればいいだけなのだから。

 

もちろんそういう戦い方を頭から否定する権利はないにせよ、そんな光景を見ながらささやかな絶望を抱くことくらいは許してほしい。

 

「言葉はしょせん言葉でしかないんだな」と。

 

 

さて今回の主役である柿次郎さんもまた、「言葉の人」である。日常的にキャッチ―な企画・コピー・タイトル・あだ名・その他諸々をぶち上げている姿は、彼をウォッチしている人であればすぐにイメージができるだろう。

 

けれど、「言葉だけの人」と柿次郎さんとのあいだには決定的な違いがある。

 

彼はおそらく、「言葉はしょせん言葉でしかない」ことなんて、とっくに、最初から、理解しているのだ。

 

その上でめいっぱい絶望し、やがて絶望にも飽きたからと、がむしゃらにリアリスティックな実践を繰り返しているように見える。言葉はそのための手段にすぎない。

 

まずこの点において、「言葉がいちばん大事だ」と無邪気に言えてしまうような人たちよりも、僕の柿次郎さんへの信頼度は少なくとも一段高い。

 

また個人的な大きい見立てとして、2020年代以降というのは、「言葉だけ」では通用しなくなったあとの「言葉+コンテクスト」の時代なのだと思っている。

 

どういうことか。20世紀このかた、世界的に大きな影響力を持った西洋哲学は「言葉」というツールを材料にして思考を展開してきた。2010年代には、その流れに呼応するようにTwitterという文字ツールが社会的影響力を強めた。ここまでが「言葉の時代」だ。

 

けれどいま我々はむしろ、短尺コンテンツがあふれ、情報が断片化する時代だからこそ、言葉に飽き足らない「コンテクスト」を求めている。

 

世を席巻する「推し」カルチャーは、その人のコンテクストを含めた全体を愛そうという態度だといえるし、今年話題になったAIによる画像生成ツールが、絵描きの仕事を根こそぎ奪い去るほどの決定的なパラダイムシフトを起こしそうにないのは、おそらく著作権や再現性といった問題以上に、おそらくAIにはコンテクストがないからだ。

 

どんなにハイレベルだとしても、AIどうしの将棋の対局なんて別に見たくならないように、人間は必然的にコンテクストを求める。

 

……やや回り道をしすぎた気もするけれど、とにかく上記の見立てを踏まえると、いま柿次郎さんをウォッチする必然性もまた分かってくる。

 

言うまでもなく、柿次郎さんはコンテクストの塊だ。

 

「やってこ!」の合い言葉の裏に壮絶なバックボーンとカルチャー精神を持ち、責任を背負いながら会社を走らせ続け、Web上の発信にとどまらず長野に独自のリアル空間を爆誕させている。

 

そんな彼が様々なシーンで求められ、忙しすぎるほどに走り回っているのは、僕の視点からすると、時代の要請として当然なのだ。

 

こっちも絶望なんかしている場合ではない。

 

プロフィール

大島一貴(おおしま かずき)

1996年生まれ。学生のときにHuuuuでライターをやっていたという噂。東京大学文学部卒。いまは会社員をしているが、身の振り方は考え中。

 

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書籍概要

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■商品情報■
・今、自分は「ある」よりも「ない」だと思っている人
・自分の生き方に選択肢が「ない」と思ってる人
・いつか「ある」状態になりたいと思ってる人

この本はそんな人にこそ読んでもらいたい。


タイトル :おまえの俺をおしえてくれ
著者        :徳谷柿次郎
出版社    :風旅出版
発行元    :Huuuu
定価        :定価 大人1,800円(税別)
判型        :変形四六判(113 mm ×182mm)
発売日    :2022年9月16日(40歳)

 

目次(抜粋)

1)自分で自分を編集する
2)異常でしたね。執着が。
3)セロトニンがでない部屋
4)おまえすごいな、最高やな!
5)「遊ばなきゃ」っていう意識
6)ずっと下唇震えてましたからね、急に決断迫られて
7)自分にとって一番いい栄養分があるところに容赦なく動ける
8)おまえの俺をおしえてくれ

寄稿「おまえの俺をおしえてくれ」
小林直博/原宿/宮脇淳/シモダテツヤ/小野田弥恵/MOTOKO/塩谷舞/カツセマサヒコ/納谷ロマン/小倉ヒラク/藤本智士/友光だんご/石崎嵩人(敬称略)

 

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