おまえの俺をおしえてくれ

9月16日出版 徳谷柿次郎の書籍『おまえの俺をおしえてくれ』寄稿エッセイブログ

「柿次郎は二度、しぬ。」(記:荒井慶悟)

柿次郎くんと出会ったのは2016年。僕は「腹よわ、ウンチ」を題材としたイベントを企画し、ゲストとして柿次郎くんを呼んだ。柿次郎くんは、腹よわを何かの記事で公言していたように記憶していて、ウェブ界の腹よわ代表として召集をかけた。(朝起きたらビオフェルミンをポリポリしてるくらい腹が弱かったらしい。ビオフェルミンポリポリは腹よわ界ではよくきく話。)

 

返事は意外にも二つ返事。トントン拍子にイベント当日になった。最初の印象は良くも悪くも「ウェブ」の人で、不健康そうなイメージがどこかありつつも、バーグハンバーグバーグの人というイメージも合間みえて、どこか東京臭がしていた(気がする。)目は半分くらいしか開いてなかったように思う。

 

開口一番、「腹よわ」といえば、バーグに入ったときに「ウンチを見ながら、ご飯を食べる」っていう企画をしたんですよね、とウェブ記事を見せてくれた。ウンチの企画をしつつも、何を見せられているのだろうと思った、初対面なのに。そこから、7年。柿次郎くんのお腹はローカルによって醸され、他人も羨む「腹つよ」に生まれ変わった。僕の持った問いは「よわ」を「つよ」に変えるほどのプロセス。7年の間にいったい何があったというのだろうか。このリサーチクエッションに答えるために、7年間の柿次郎くんのnote、ウェブ記事、ラジオコンテンツを墓掘した。結論からいおう。

 

わからなかった。問いの立て方がまずかったのかもしれない。けれど、見えてきたこともあり、無駄ではなかった。今回は、柿次郎君の記録から見えてきたことをシェアしたいと思う。

 

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過去の記録からわかったことは、「柿次郎は二度、死んでいる」ということ。突然のことで申し訳ないが、そのようだ。僕調べで行くと、創業時の2017年から2019年の間に一回。そしてコロナ禍の2020年〜で二度目の死が訪れている。なので、2017年以前、2017年から2019年の間、それ以降で柿次郎君に出会っている人は、全くの別人と出会っているといっても過言ではない。もしかしたら、みのもんたのように三人いるのかもしれない。

 

視座や考え方、価値観のアップデートされて、古い考え方が死ぬ。柿次郎というソフトウェアが上書きされ、柿次郎という人間のバージョンが進化しているようだ。例えば、2018年の名記事「アイデンティティーの強制上書き」でも、彼自身、過去の自分が自分でないという感覚を持っていると自認している。

 

「毎年が人生のピークだ」そう思い込みながら新しいことにチャレンジしているが、その決断の回数が増えるたびに冒頭の「過去の自分が自分じゃない状態」に陥る

少し怖いのが、柿次郎を名乗った前職時代の記憶も薄れてきていることだ。馬鹿笑いしながら過ごした5年の記憶やコミュニティの中で立ち居振る舞っていた自分…。

 

2018年までの柿次郎君はバーグでの立ち位置や独立してからの周りからの期待・要請という外面からの要求により、柿次郎というソフトウェアを駆動させていた。しかし、内面では、その構造で「柿次郎」を駆動させることに疲れていた部分もあったのだろう。その苦悩のプロセスの一部記事にしたのが2019年一発目の記事「社会からの要請とジャムおじさん」だ。

 

本業のWEBメディアの編集はもちろん、二拠点生活+全国を旅しながらの取材ツアー、そしてお店の運営…。自分自身の容量を見極めず、「やってこ!」の鼓舞魔法を唱えながら走り続けていたが、途中で心と体が分離してしまった。

 

自己決定の繰り返し。そのこと自体が生むアイデンティティの上書き。でも、やりきれない社会の要請。だからこそ、自分の中からの言葉を探すようになっていった。ここに一度目のアップデート(死)があった。

 

自己の喪失。アイデンティティの再定義。やるべきことはわかっているものの、やりきれない自分との葛藤が生まれていった。このあたりから内省を始めて、人前で話すときも自分に問いかけながら言葉を探すようになった記憶がある

 

noteに書かれた断片的な苦悩、葛藤だけでは判断できないが、自分を壊し、再構築が続いていった3年だったと想像する。もうこれだけで、以前のカキジローとこの3年の柿次郎、まったく変わっているはずだ。

 

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再構築していった柿次郎バージョン2.0は、奇しくも「コロナ」によって揺らぐ。それが2020年の「文章が書けなくなっている」から感じとることができる。

 

コロナショック以降、思考の詰まりを感じている。

ここ数ヶ月考えていることがひとつある。それは人間の欲求がSNSによって小さく小さく細切れに処理されているのではないか?ということ。

 

僕が持つ、柿次郎君のイメージのひとつは、良くも悪くもインターネットの人だ。そのイメージにつきまとうのは「瞬発力」や「速さ」だったりする。そんな無重力の人が、自分が関わる世界観について疑問を持ち出し、瞬発力や速さとは全く逆の世界観である「目の前の生活」という重力をちらつきはじめさせる。コロナは一人の人間のパーソナリティまでに影響したのだ。

 

とにかく感情の処理が早くなっている。だからこそ立ち止まって、しっかり考える生活に自分自身を戻さないといけない。植物に水をあげて、土を掘り返して種を植え、毎日2食分の自炊をする。

 

無重力の人が、植物に水をあげて、土を掘り返している。そして、自炊をする。普通だ。至極、真っ当な生活だ。コロナ禍によって、強制的に家にいる生活を強いられる。そのこと自体が5年ぶりだという。柿次郎君はやってこ!で自分をふりしぼり、コマンドキーの→だけを押し続けて毎日を過ごしていたのだろう。

 

いま考えると、あまりにもおかしい時間の使い方をしていた。誰か止めてくれよって思うけど、いろんな人が止めてくれてたんだろうな…。気づかなかった。聞く耳をもたなかった。

 

しかし、強制力を持って生活をすることによって、新たな視座を獲得する。「用事」への開眼だ。2019年までの柿次郎君では絶対こんなことをいわない。別人物である証拠が突きつけられた。おそらく、二度目のアップデート(死)が起こっている。

 

その反動として芽生えたのが「用事」への好奇心だ。・毎朝、植物に水をあげる・ネコや犬などのペットの世話をする・自分のため、誰かのために料理をする・洗濯物をちゃんとまわしてたたむ・借りた本を読んで返し、感想を伝える

 

「用事」を獲得した柿次郎君の世界の捉え方は、これまでとテイストが変わっていく。「旅の二周目の景色は、少し違って見える」だ。(二周目っていってるのだ。)

 

その一番の近道は「なにもしない」を選び取ること。もったいない精神の結晶として生きている自分が言うのは説得力皆無なんだけれど、ただ単純に長く滞在すればおのずと「なにもしない」時間が生まれる。この延長に「ただ仕事をする」「ただ読書をする」といった、旅先でせっかくホテル代を支払っているのに日常と同じことに価値を見出す世界があるのではないだろうか。

 

挙句、もう自分の見え方なんてどうでも良くなっていく境地に達する。

 

「自分」はなんだろう?の理解を諦めて、「自我」と「自己」に切り分けて考えたらハッピーな世界に辿り着いた

 

コマンド→を押しっぱなしだった柿次郎君。Bダッシュのしすぎでききずらくなってしまったコントローラーは「用事」という↓ボタンを覚えることによって、この境地まで辿り着いたのだろう。↓↘︎→で波動拳だせる。

 

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と、ここまで長々と柿次郎君のトランジションを見てきたわけだけれど、あらたな疑問が浮かぶ。彼は、自分が変わっていく様を「上書き、アップデート」という言葉を使っていることだ。ならば、上書きされてる根本があるっていう意味も含んでいるのではないだろうか。その根本が「柿次郎のオペレーションシステム」だ。「ない」を「ある」に変えるための大きな駆動システム。

 

本来であれば、ここでその内容を言及して締める場面だろうが、「おれおま」の記事を読んでいると、その根本にみんな気づいていると感じた。本の中でも、きっと言及しているだろう。だから、あえて書かない。自分なりのアンサーを本の中から見つけることを願って。

 

 

プロフィール

荒井 慶悟(あらい けいご)

「小さな声を掬うをコンセプト」に場づくりを行っています。

 

おまおれエッセイ寄稿コンテスト開催中(9/30迄延長)

アイデンティティを他者との対話で探る。今回の本のポイントです。テーマ「おまえの中の柿次郎を教えてくれ」でエッセイを寄稿してみませんか?

10名の方におまおれ本と黒磯本をセットでお送りします。

 

※詳細・応募フォームはこちら

『おまえの俺をおしえてくれ』エッセイ寄稿コンテンスト 受付フォーム

 

 

書籍概要

https://huuuu-jp.stores.jp/

■商品情報■
・今、自分は「ある」よりも「ない」だと思っている人
・自分の生き方に選択肢が「ない」と思ってる人
・いつか「ある」状態になりたいと思ってる人

この本はそんな人にこそ読んでもらいたい。


タイトル :おまえの俺をおしえてくれ
著者        :徳谷柿次郎
出版社    :風旅出版
発行元    :Huuuu
定価        :定価 大人1,800円(税別)
判型        :変形四六判(113 mm ×182mm)
発売日    :2022年9月16日(40歳)

 

目次(抜粋)

1)自分で自分を編集する
2)異常でしたね。執着が。
3)セロトニンがでない部屋
4)おまえすごいな、最高やな!
5)「遊ばなきゃ」っていう意識
6)ずっと下唇震えてましたからね、急に決断迫られて
7)自分にとって一番いい栄養分があるところに容赦なく動ける
8)おまえの俺をおしえてくれ

寄稿「おまえの俺をおしえてくれ」
小林直博/原宿/宮脇淳/シモダテツヤ/小野田弥恵/MOTOKO/塩谷舞/カツセマサヒコ/納谷ロマン/小倉ヒラク/藤本智士/友光だんご/石崎嵩人(敬称略)

 

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