おまえの俺をおしえてくれ

9月16日出版 徳谷柿次郎の書籍『おまえの俺をおしえてくれ』寄稿エッセイブログ

「いちばんの先輩」(記:菊池百合子)

Webメディアでライターの仕事を始めて、4年半が経つ。

いくつもの編集チームとクライアントの方々にお世話になってきて、さらにインタビューを通じてご縁をいただいてきた。20代前半からこの仕事を始めたので、ありがたいことに先輩と呼べる存在がたくさんいる。その一人が柿次郎さんだ。

同じチームに所属したことはないし、一緒に仕事をした回数も少ない。でも「先輩」と言われていちばんに思い浮かぶのは、柿次郎さんだ。

 

7年ほど前、オウンドメディアブームが起きていた。ツイッターでよく見かけるWebメディアの“有名人”だった柿次郎さんは、生まれたばかりのジモコロを背負って地方をかけずり回っていて、私にとって「よくわからないけれどおもしろそう」と目で追ってしまう存在だった。

そして2016年、画面の向こう側にいた柿次郎さんと初めて会うことになる。ジモコロが地道につくり出してきたうねりが結実した、黒川温泉ツアーだった。

https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/kakijiro017

熊本地震後の予約キャンセルが相次いだ観光地・黒川温泉に、ライターや編集者などの情報発信を得意とする100人を集めて、観光を楽しみながら発信を試みるツアー。主催は柿次郎さんとお仲間たち、そして黒川温泉の方々。

ツアーの予告記事に添えられていたのは、「『参加したい!」という方、情報発信にご協力いただける方は柿次郎までご連絡ください」の一文だった。

発信力もお金もない大学生が参加しても良いものか悩みながら、最後は意を決して送信ボタンをクリック。すぐに柿次郎さんから「仲間が増えるのは大歓迎なので、ぜひご参加ください」とお返事が届いた。

自分のことを知っている人が誰もいないツアーに飛び込んだ結果は、想像をはるかに超えて記憶に残る旅になった。

ジャンルがばらばらで普段は一緒に活動していなさそうなWebメディアの人たちが、一堂に会している。なぜなら自分たちのスキルの使いどころを真剣に考えているから。そして100人が行動をおこしたその真ん中には、柿次郎さんがいた。

思いの渦が、台風のように大きくなっていた。熱量のある大人たちが集まったらこんなことができるんだ、と目の当たりにした。

 

(Photo by : Kenichi Aikawa)

 

後から思えば、このとき熱量を全身で体感できた経験が、今の仕事にたどりつく最初の扉だったのだろう。この数年後、私もWebメディアの世界に入り、「地方」をテーマに取材をするようになった。そして熊本ツアーから4年後、柿次郎さんと再会する。

直接話すようになってからつくづく、柿次郎さんと私は、この仕事をしていなければ交わらない世界で生きてきたのかもしれないなと思う。

柿次郎さんが好きなものについて何も知らなくて、「きくちは何も知らないね」と言われてきた。実際いつも、言っていることの7割くらいはよくわからない。価値観の根っこが違うから、柿次郎さんの言うことに私がどうしても納得しなくて、妙な緊張感が漂った瞬間もある。

でもそんな私にも、柿次郎さんはずっと「先輩」でいてくれた。

私が自分で地方出張のスケジュールを詰め込んだ結果、文章の精度が下がりかけていたとき、すぐにその予兆に気づいてイエローカードを出してくれた。地方取材の先輩である柿次郎さんがずっと出張しているのだから自分も、と己の限界を確かめるべく移動していたあの頃の私にストップをかけられるのは、柿次郎さんしかいなかった。

柿次郎さんが関わる仕事の現場で、私が関係者に迷惑をかけてしまった夜のこと。全て終わってから柿次郎さんに報告の電話をしたら、ぼろぼろと涙がこぼれてきた。先輩の前で涙を流すことなんてほとんどないのに、「この悔しさを共有できるのがきくちでよかった」と言ってくれた声が、あまりにも隣にいてくれたから。

人生初めてのキャンプは、Huuuuの社員旅行だった。テントに泊まったことがない私のために「テントに泊まる体験ができるように」と道具を一式持ってきてくれて、私は一人だけ外で寝ることになった。他の先輩たちが止めようとしても柿次郎さんが「このままじゃきくちは一生テントで寝ないままだ」と言ってくれたおかげで、人生の経験値が一つ上がった。星がきれいな夜だった。

 

柿次郎さんが私を育てなければいけない理由なんて、一つもない。それでもいつも、つかず離れずの距離で見守りながら、たくさんのチャンスをくれた。そしてちゃんと、怒ってくれた。

おかげでライターとして歩き続けられたのだから、もうそろそろ私も「後輩」ばかりしていないで、ちゃんと柿次郎さんのように新しい道を拓いていかねば、と思う年頃になりつつある。

でもやっぱり、柿さんはこれからも、私にとっていちばんの先輩です。40歳のお誕生日、おめでとうございます。

 

 

 

プロフィール

菊池百合子

2018年からフリーランスのライターとして、インタビュー記事を中心にWebメディアや雑誌で執筆している。神奈川県で生まれ育ち、2018年に滋賀県へ、2020年に沖縄県へと引っ越し。

 

おまおれエッセイ寄稿コンテスト開催中(9/30迄延長)

アイデンティティを他者との対話で探る。今回の本のポイントです。テーマ「おまえの中の柿次郎を教えてくれ」でエッセイを寄稿してみませんか?

10名の方におまおれ本と黒磯本をセットでお送りします。

 

※詳細・応募フォームはこちら

『おまえの俺をおしえてくれ』エッセイ寄稿コンテンスト 受付フォーム

 

 

書籍概要

https://huuuu-jp.stores.jp/

■商品情報■
・今、自分は「ある」よりも「ない」だと思っている人
・自分の生き方に選択肢が「ない」と思ってる人
・いつか「ある」状態になりたいと思ってる人

この本はそんな人にこそ読んでもらいたい。


タイトル :おまえの俺をおしえてくれ
著者        :徳谷柿次郎
出版社    :風旅出版
発行元    :Huuuu
定価        :定価 大人1,800円(税別)
判型        :変形四六判(113 mm ×182mm)
発売日    :2022年9月16日(40歳)

 

目次(抜粋)

1)自分で自分を編集する
2)異常でしたね。執着が。
3)セロトニンがでない部屋
4)おまえすごいな、最高やな!
5)「遊ばなきゃ」っていう意識
6)ずっと下唇震えてましたからね、急に決断迫られて
7)自分にとって一番いい栄養分があるところに容赦なく動ける
8)おまえの俺をおしえてくれ

寄稿「おまえの俺をおしえてくれ」
小林直博/原宿/宮脇淳/シモダテツヤ/小野田弥恵/MOTOKO/塩谷舞/カツセマサヒコ/納谷ロマン/小倉ヒラク/藤本智士/友光だんご/石崎嵩人(敬称略)

 

【一冊販売】『おまえの俺をおしえてくれ / 徳谷柿次郎』 | 風旅出版

【5冊卸販売】『おまえの俺をおしえてくれ / 徳谷柿次郎』6掛け 9/30迄 | 風旅出版

【10冊卸販売】『おまえの俺をおしえてくれ / 徳谷柿次郎』6掛け 9/30迄 | 風旅出版

【20冊卸販売】『おまえの俺をおしえてくれ / 徳谷柿次郎』6掛け 送料無料 | 風旅出版

【50冊卸販売】『おまえの俺をおしえてくれ / 徳谷柿次郎』6掛け 送料無料 | 風旅出版